きもの業界は、この20年、右肩下がりで小さくなっています。
小さくなって、あちらこちらで仕事を辞めてしまっているので
色んな部分が途絶えています。
倒産や廃業がどんどん起った後、今また静かに少しずつ仲間が減って行っています。
ある紬の大きな産地の老舗が、「今年で仕事を辞めます。もう商品はほほとんど有りません。」とおっしゃいました。
ご夫婦でとても良いものを作って下さっていました。
私が持っている紬で一番良いものをその機屋さんで織っている時に
出会って作りました。
会社がなくなっても勤めていた人が独立してやるさ!
と言う人がいますが、それは簡単なものの場合です。
手がこんだものほど作れない訳ですから、良いものほど入手が出来なくなっています。
「好きなものに出会えるまで待っています」という出会いの可能性が
どんどんなくなっています。
しかし、時代がそれを求めているのなら仕方が有りません。
昨日、身長188cmの方が金曜日にお召しになる浴衣を作りにいらっしゃいました。
中3日しかないのですから既製品しか間に合いません。
しかし、 身長188cmでは既製品が合いません。
という訳で急遽、特急仕立てをさせていただくことになりました。
普通の流れでは間に合いませんから、一級和裁士さんを指導する立場の仕立て士さんに特急で縫っていただきます。
その方がいなくなったらその対応が出来なくなります。
そんな場面ばかりです。
27歳のすがすがしい青年さんは、季節や寸法やさまざまな決まりが多い
きものの世界に興味を持って下さったようです。
今のきものの沢山の部分が出会えない、入手出来ないようになることでしょう。
今の20台の方々が興味を持って下さるのは、早い、簡単だという合理性ばかりではなく、時間がかかる、合理的ではない要素を沢山持つ部分でも有って欲しいです。
時間がかかるには理由があり、合理的ではないというきものは、何回も縫い直しが出来て13mの布にいつも戻ることが出来るエコの究極です。