床の間の掛け軸を「則天去私」に架け替えました。
この「則天去私」という言葉は、私が20代後半に丸の内に勤務していて、毎日丸ビルの地下のパン屋さんにお昼のパンを買いに行くときに入り口のお店にかかっていた小さな掛け軸の文字でした。
何回も見て、「いいな、いいな、やっぱりいいな」と思っていました。
後日、福岡の書の上手な叔父に、この文字を書いてもらいました。
軸にする必要が有ったので、軸やさんを探して表装しました。
それがこのお軸です。
私が掛け軸にはまったきっかけになった書です。
「則天去私」とは、夏目漱石の言葉と知った時も嬉しかったです。
http://www.kikikomi.info/natsume-souseki-sokuten-kyosi/
書や絵画など、壁にかけて見るものは、何回も見ていると
物足りなくなることが多いです。
それが、その作品の力だと思います。
物足りなくならなくて、何かを与えてくれる作品が長く支持されると思います。
丸ビルの1Fにあったそのお店は、今も同じような形で有るのが嬉しいです。
言葉には出来ない、数値化できない、「良い」とか「力がある」ということの
理解が、きものを見る目にこの上無く役立っています。
それがなかったら続けられなかったと思います。
日常の些細な行為や経験の全てが、どこかで十分に役立っていると
思わずにいられません。
長年お世話になった私の書の先生の作品です。
1文字の楽しさを満喫できます。
私は、やさしいかなよりも力強い漢字が大好きです。
墨色の濃淡やかすれ具合の変化が小気味よく楽しく感じられます。
何回見てもほれぼれする大野先生の作品「栄静」
心を刺激され、励まされ、洗練された気持ちになる素晴らしさだと思います。