伝統工芸展入選作家四ツ井健先生の作品の力とは

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作品の真価を問う作業の中の1つ

「何かと対峙させて見つめることで初めて見えるもの」

とは、「誰かが羽織ってみる」ということでも有ります。

何か基準となるものに合わせて見るのです。

私は、自分が羽織った時にどう見えるか?を基準にします。
明るすぎると思うのに、私にも着こなせるとか
大きすぎる柄なのに、身長160cmの私が羽織ってこんな感じとか。
四ツ井健先生の作品も、羽織らせていただくことで 多くのことが分かりました。

見ているだけと大違いでした。

「線を表現したきもの」だと思ったら、「人の動きを美しく見せるきもの」
でした。
線表現が絵のように美しい平面的な布を、立体の人の体に
巻きつけて形が壊れないのか?と心配になりますが

とんでもない!のです。
平面で見ていた「静けさ」が変化して、とても動きのある
美しい着姿になって、新しい形を作り出します。
これはもう、羽織っていただくしかないのですが、

この夏の訪問着は、左袖脇の濃い線が、ずうっと身頃にも
つながって、その上に肩から下に同じ色の模様が連なって
何と単色ながら、すばらしいインパクトになっているのです。

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単色で全体を大きく流れる曲線ですっきり描いているはずなのに
着姿は、少しもシンプルでは有りません。

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洋服で言うならば、タックやダーツやフリルやボタンなど
沢山のものを使って作り上げるだろうことを、優雅な糸目友禅と
巻き糊という、2つの大変手間がかかる技を使って
大変広い面積をご自分一人でほとんど作られています。

「脇の下を攻略した作家さん」と呼びたくなるのは、大変失礼なことだと

思うのですが、他の部分の攻略を全部終えているのです。

その上で、誰もが思いつかない、難しい脇の下を見事に美しく

ほれぼれする構図で染め上げています。

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この訪問着は、裾が縦に向かって白くなっていますが

このために、着姿がとてもほっそり見えるのです。

その上、後ろ身頃は濃い色合いなので、その対比がぞくぞくするほど

美しいです。

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