作品の真価を知るということは、かなり難しいことです。
作者本人が、「自分の作品は、絶対にすばらしい」と思っても、
それが真価だと分かるには、まだ多くのことをこなさなければならないし
それを自分自身で行うことはなかなか出来ないと思います。
一番大きなネックは、自分自身を自分で見ることは出来ないということです。
真価を問うための作業とは、
他の作家や作品、技などと比較して見る客観性や
時間をかけて全体を見渡してから、初めて見えてくるものや
何かと対峙させて見つめることで初めて見えるものなどが有ります。
ですから、私は、作家さんや作品の「特徴を掴むには時間がかかる」
と思っています。
例えば、工芸展などで多くのすばらしい作品が展示されていますが
それらは、一人ずつの作家さんの少しの部分にしか過ぎません。
その奥にある大きなものや本当の特徴は、なかなか分からないので
工房で多くの作品を見せていただくと、表面と奥がかなり違ったりすることが多いです。
ですが、「片鱗」は有るので、それを作品展などでは探し続けます。
これは、私にとって「仕事」だから行うのですが、「自分が着るだけのきもの」であれば、ここまではやらないでしょう。
好きなものだけを集めるでしょう。
しかし、そうであれば、私の絵画のコレクションのように
限られた領域のものばかりで、広がりはないのでは無いかと思います。
「片鱗」に引き寄せられて「何があるのだろう?」と探し求めて
出会えるものがあり、その後、互いに刺激しあって生みだされるものが有ります。
そうなれば、こんなに楽しく嬉しく素晴らしいものは有りません。
求められているもの以上のものを、すばらしい技とセンスを持った
作り手の方に作り上げていただけるのです。
芸術品のような作品を身にまとうことが出来る女性としての喜びの他に
そんな作品を生み出すお手伝いが出来るのは、何とも言葉にしようがない喜びなのです。