私が着物の仕事を初めてから数年した頃、流通の中で、時々出会うとても力強い染め帯がありました。
他の帯とは全然違う、すばらしい力強さが、とてもとても気になりました。
中国の皿や風景など、とても気品高い作品たちでした。
それは、人間国宝の血を継ぐ、京都の老舗の染め屋さんの作品だと知りました。
それらの帯は、私が扱うことはできない世界の帯でした。
あるとき、意を決して、その染め屋さんを訪問しました。
その帯の素晴らしさに惹かれたことをお伝えしました。
そして、少しずつ、その染め屋さんの帯や訪問着を扱わせていただくことができるようになりました。
私の帯や着物も作っていただきました。
4代目当主は、とても気さくに、色々と教えて下さいました。
京都の本金を使った、本金泥の着物や帯は、すばらしい作品でした。
まだお元気だったお母様も、お茶を出したりして下さいました。
そのお母様こそが、人間国宝の作品を作ったお父様の薫陶をうけて、
沢山のすばらしい着物を作っていただいた「京都のお姫様のような方」だと分かりました。
長いお付き合いで、京都に行くと、いつもお邪魔してお話するのが楽しかったです。
お母様は亡くなられて、4代目ご当主も、ご病気で亡くなられました。
生前から、お母様の沢山の着物に描かれた、高い技の京友禅を何とか
皆様にみていただきたいとおっしゃっていました。
そんな夢が実現して、丸亀市で、伊可田屋 田畑コレクションを披露することになりました。
これらは、大正、昭和初期の日本の着物の高い技で作られた着物たちです。
着物は着るものですから、飾られていたのではなく、実際に伊可田屋さんの
お母様や奥様がお召になっていた作品たちです。
例えば、夏の訪問着に雪の結晶の絵を描いて涼を感じるというようなお母様の着物の話を
お聞きしたことを懐かしく思い返します。
下記のように展示されます。是非、お出かけ下さい。
「京友禅きものの美」
大正・昭和初期を中心に
伊可田屋 田畑コレクションより
日時:2025年10月11日(土)~11月30日(日)
午前9:30~午後4:30
場所:香川県丸亀市立資料館 1階企画展示室
入場無料
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ギャラリートーク
本展の見どころや制作にまつわるエピソードなどを織り交ぜてお話します。
日時:11月9日(日)午後1:30~2:30
場所:1階企画展示室
講師:伊可田屋 田畑裕紀子氏
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