実際にお手入れする現場を何軒も見学しました。
そして少しずつ、「洗い」や「シミ」について、そして、きものの世界のお手入れについて私なりの見解が出来てきました。
(1)お客様が気がつかない部分のお手入れ
・シミは、職人さんが徹底した明るい環境で厳密に調べるので、依頼者であるお客様が気づかない部分も見つけることが多いのです。
・これはつまり、お客様が認識できていない部分をお手入れすることになります。
お客様がきづいていない部分の仕上がりに対して、お客様は正当な満足感は得られないと思います。
(2)日本のきもののシミ抜きレベルは高い
・日本のきもののお手入れ技術は、絹を扱う技術として世界的にも高いレベルにあります。
・クリーニングで落ちないとか手入れしにくい洗い物やシミ抜きは、きものの洗い職人さんに回されて来ます。
・上手いきもののお手入れ職人さんは、クリーニング店の指導や講習会も行っています。
・きもののお手入れ技術は、人の手による経験と感による部分が強いので、腕には当然ばらつきが有ります。これは、機械化できない部分です。
(3)お客様にとって一番必要なことをするのが呉服屋さん
・きものは染め替えや仕立て替えによって、着回しが出来ます。
「シミ抜きして下さい。」とご依頼が有っても、ご本人ではなく、娘さんのきものとして生かした方が良いとか、もうお手入れしてもその効果が見えないということが有ります。
つまり、ご依頼いただくお客様のライフスタイルの中で、そのきものの役割を見極めてご提案する人が必要なのです。きもの全体の知識が有って、お客様の立場に立って考えられなければいけません。
このような役割は、シミ抜き職人さんの仕事では有りません。
呉服屋さんの仕事です。
、「お客様の一番傍に居て、ライフスタイルに合ったご提案をさせていただく」というのは、とても重要な役割のように思います。
このように考えたので、きもの人では次のようなお手入れをやっています。
(1)お客様の立場に立った判断と、事前の見積もりを出させていただきます。
お客様ときものと、どちらもが幸せになれるお手入れがしたいので、そのお手入れが最適かどうかいつも考えます。時には、「申し訳ないですが、これ以上手を加えない方が良いと思います。」とか「シミ抜きよりも染め替えた方が良いかもしれません。」とアドバイスさせていただくことも有ります。
それから、シミや汚れの状態を事前に把握していただきたいので、事前の見積もりを出させていただきます。
シミを90%落としたら、ほとんどシミが無くなって費用はおいくらで、何週間かかります。
60%では、かなり黄色いシミが残りますが、これ以上やると生地が傷みます。
というような見積もりを出させていただいてから、お客様にどこまでやるか?のご判断をいただいてから、進めさせていただきます。
(2)腕が良く、信頼できる職人さんに、仕事をお願いしています。
きものは、生きています。絹は有機繊維として呼吸しています。この性格を良く分かっていて、シミや汚れの根本を見抜く「目」とその対処を知っている「腕」と、これ以上やったら生地が傷むからというような「経験と感」の優れた職人さんに仕事をお願いしています。
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