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[ 伊藤康子のきものの話 . . . . .]

 

伊藤康子のきものの話

 

きものを知るために欠かせない糸のこと

 きものをしっかり知ろうとすると、どんな糸が使われているのか?
 という深い部分にまで踏み込まないと正しい判断が難しいことが多いです。

 それは、糸の種類が、きものの格にも大いに影響しているからです。


 例えば、織物のきものは、紬糸を使ったものは紬で格が低いですが

 絹糸で織った織物は、能装束で着られるきもののように、

 格が高く、セミフォーマルまでお召しいただけます。

 では、何が違うの?と言いますと、糸も違いますが、光沢も大いに異なるのです。

 

 絹糸を使ったものは光沢があり、格が高いお席まで着ていただくことが出来ます。

 結城紬を初めとする真綿糸を使ったものは、ざっくりした風合いで
 光を吸収して光沢が無く、低い格になります。

 昔、くず繭と言われて、今は貴重な高級繭である玉糸は、絹糸と一緒に
 使われることが多いために、光沢があり、丈夫で、少し上の格まで
 着ていただけます。

 大きく分けて、絹糸、真綿糸、玉糸があり、それらは製法が異なるので

 糸の風合いが異なり、結果的に織り上がる反物の光沢が違ってきます。

 きものの光沢はとても重要です。

 パーティや式典などを行う室内では、蛍光灯の光を反射する絹製品が光沢があり

 光を反射して、とても綺麗に見えます。

 しかし、真綿糸を使ったものは、光を吸収していまい、華やかに見えません。

 逆に屋外など太陽光の下では、穏やかで馴染みが良いのです。

 

 シーンの観点から見てみますと、例えば、 山崎世紀作おしょうしな紬は、 
 玉糸と絹糸を使った紬のおきものです。

 紬では有りますが、真綿ほど光を吸収してしまわなずに

 おだやかな光沢です。このために、無地のきものは、セミフォーマルの

 お席にまで着ることが出来ます。

 牛首紬の後染め着尺や訪問着も、玉糸と絹糸ですから、セミフォーマルの

 お席まで着ていただけます。

 結城紬は、最高級の紬ですが、真綿のざっくりした風合いですから

 格は低くて、街着やお食事会・観劇程度の格になります。

 それだけ贅沢な満足度が高いおきものですね。

 このような糸の違いから生まれる風合いの違いと格の違いは、様々な

 紬をお召しになることで分かってきます。