(1)通し裏って何?
女性のきものの裏地は、通常、胴裏(どううら)と八掛けという2種類の裏地を
合わせています。
胴裏は、背中など身頃の部分や袖などの広い部分で
八掛けは、裾と袖口の部分です。
なぜ分けるかと言いますと、胴裏の部分は、裏地としての控えめな役割が
有れば良いのですが
八掛けの部分は、「ちらりと見える」ことを目的にして 効果的な色に染めます。
また、この部分は裾さばきが影響して痛みやすいので、
胴裏よりも少し厚くて丈夫な生地にするのです。
それに対して、通し裏とは、胴裏の部分と八掛けの部分を全部1枚の布
で仕立てます。
その1枚の布の色あいが、表のきものと呼応しあって
趣が出ますし、見た目もきれいです。
上記掲載の大島紬は、表地に合わせた深緑の色に染めた
通し裏をつけました。
(2)男性の方がお洒落
女性のきものの裏地は上述のようなものですが
それに対して、男性のきものは、通し裏が基本です。
では、女性と男性でどうして裏地の付け方が違うのでしょうか?
裏地で遊び、お洒落をするのが、男のきものの着方です。
表のきものは目立たないものを着て、
それを脱いだ羽裏やきものの裏に趣向を凝らして「遊ぶ」のです。
表と裏の世界を着分けていますね。(*^_^*)
(3)自分しか分からない
通し裏の何が一番おしゃれな部分か?というと、
着ている自分は、脱ぎ着するたびに何回も裏地の色を見て、
表地のきものの色との調和に満足したり、その色選びをした自分がうれしくなります。
が、これは、他人の目からは見えない部分なので、誰も分かってくれません。(ぐすん)
言わなければ分かりません。
昔は、脱いだきものを見て、うっとりする女性がいたのでしょう。
とても日本的な美学ですね。
(4)色の調和と変化
通し裏選びのポイントは、
表のきものの色に対して、調和しながら、アクセントにもなり
着る方らしさを出せる色選びをすることです。
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そのためには、着る方の年齢、体型、性格、好み、色写りなどを考慮して、
「その色」を探します。
上の画像の大島をご着用になるのは、30代後半の方です。
深い緑の中で、地味過ぎず、「良い色」「調和する色」を探します。
色は重要なので、沢山の色の中から選びます。
100種類位の色見本では、欲しい色はなかなか見つかりません。
1000近い色の中から選んだ色を、ほとんどの場合、誂え染めします。(別注染め)
2週間ほどで染め上がる色に、心ときめき、それをまたきものの裏として仕立てあげた時に、その色のバランスにうっとりします。
(5)通し裏にするきものは?
どんなきものの時に通し裏にするか?というと、無地、紬、などのきものが多いです。
主に、表のきものの主張が控えめな場合です。
表の帯や小物とのコーディネートだけではなく、裏で遊ぶことで広がりが見つけられそうな場合です。