草木染め手織り紬

この紬は、国産生糸、手引き座繰り糸、手引き玉糸、
真綿つむぎ糸を使って草木染めした手織紬です。

国産の糸というのは、良いものを求めた結果に行き着く所です。

また、手で糸を引くとか紡ぐということも同じで、
機械などの単調な繰り返し作業ではない、頭脳と技と心を使った
行為で、その結果がすばらしい風合いとなって表現されるのです。

私がネットできものの仕事を始めるきっかけになった牛首紬との出会いも
草木で染めた先染めの牛首紬の風合いに魅せられたからでした。

それは、言葉にはしずらい素晴らしい風合いでした。
その玉繭をこの紬も使っています。

この紬は、縦糸には、生糸や座繰り玉繭を使用し、
緯糸は、真綿つむぎ糸を使用しています。

絹糸は、太さを均一化させてくれ、光沢も出ます。
真綿は、紬らしい深さやふんわりとした風合いが出ます。
玉繭は、丈夫さと品質の高さで定評が有る高級紬です。

その厳選した糸を季節ごとの草木で丁寧に染めました。

車輪バイ、ロッグウッド、うこん、コチニール、茜（あかね）
くぬぎ、現の証拠...など、ペルーの石で染めたりもします。

それら、風や空気や自然の移ろいなどを色にして
手織りしたものです。

「堅牢度、実用性などを考えると染材が限られてきます。
しかし、自然の中の草、木、花、など染めてみたくなるものと、
出会うことがあります。

遊び心で染めることも多々あります。驚くような色が出たり、
全く染めつかなかったりもします。」

と作者は言います。

手織りには、織った人の個性が現れます。
この反物には、端正に丁寧に、しっかりと豊かな時が織り込まれて
います。
何ヶ月にも渡って織るこの工程が完成するときに、
作者は、

　　「もう終わってしまったの？」

と思うのだそうです。

織ることが楽しい、その喜びの時間がここに有ります。

ほとんどが、草木染めですが、１点だけ化学染料染めが有ります。

「いつの日か織りたいと考えている絣がある。
木洩れ日がレースのカーテンを通りぬけ畳に影を移している。
風に揺らいでいる。そんな絣を織りたい。」

と作者が実際に沖縄で見た光景を織り上げたもの。

ここにご紹介するきものは、
県知事賞や県議会議長賞、織物展の新人賞を受賞
した作品などです。

その作者が私に、「これで私のコートを作って下さい」と
預けられた反物に、私ははさみを入れることの戸惑いを覚えました。

反物としてすばらしく織られた布には、切ることが
恐れ多い気持ちになるのです。

たとえ１ｃｍでも、この布をもっている人は大いなる喜びを感じる
だろうと思われます。
この反物は、仕立て上がる前にもうすでにここに完成された美が有るのです。


しかし、きものは反物として飾っておくものでは有りません。
「着て下さる人」が居て、初めてその嫁入りを喜ぶ母の心境になれます。

ここに掲載します反物は、大切に着て下さる方を募集します。
良い方に出会うことを心から願っています。

（いずれも１尺幅　１４ｍ）